
「はっけよいのこった!」
テレビの相撲中継を見ていると、必ず耳にするあの掛け声。
どこか独特でリズミカルな響きがあって、ついつい真似したくなるけれど、実際にはどういう意味なのか、ちゃんと説明できる人って意外と少ないんじゃないでしょうか。
私も子どもの頃、祖母が夢中で相撲を見ていたのを思い出しますが、正直なところ「この掛け声ってなに?」と不思議でしかたなかったんです。
でも大人になった今、子どもに「ねえ、これどういう意味?」と聞かれると、曖昧なまま答えてしまいそうになって、ちょっと反省したりして。
相撲は日本の伝統文化として大切にされてきたものだからこそ、こうした言葉の背景にも長い歴史や意味があるんですよね。
この記事では、「はっけよい」や「のこった」の言葉の由来や、それが使われる場面について、やさしく丁寧にまとめてみました。
意味を知ることで、これまでとは違った視点で相撲を楽しめるようになるかもしれません。
お子さんと一緒に相撲を観ながら「この言葉にはね…」なんて会話が生まれたら、それもまた素敵な時間になると思いますよ。
「はっけよい・のこった」ってそもそもどんな掛け声なの?
相撲を観ていて、最初に耳に飛び込んでくるのが「はっけよいのこった!」という行司の掛け声。
この言葉には独特のリズムと響きがあって、小さな子どももつい真似したくなるような、ちょっとクセになるフレーズですよね。
でも、改めて「これって何のために言ってるの?」と聞かれると、案外はっきり答えられない人も多いのではないでしょうか。
私も昔はただのお決まりのセリフだと思っていて、意味なんて気にしたこともなかったんです。
でも実は、この掛け声こそが、相撲の世界でとても大切な役割を担っているんですよ。
相撲は、単なる勝ち負けを競うスポーツというだけではなく、古くから続く伝統文化として、日本人の心や礼儀作法にも深く根ざした行事でもあります。
だからこそ、力士たちの動きひとつひとつ、そして行司の言葉にも、それなりの理由や意味があって当然なんですね。
「はっけよいのこった!」は、その一戦を見守る中で、行司が力士たちの動きを支えるために発する“声の技”ともいえる存在なんです。
この掛け声は、ただ耳に楽しいだけのものではありません。
試合の流れを作ったり、緊張感を高めたり、力士たちの気持ちを鼓舞したりするような、目には見えない大切な働きをしています。
そしてまた、観ている側にとっても「今、真剣勝負の空気が始まったんだな」と感じさせてくれる、大切な合図にもなっています。
試合で声を出しているのは「行司」という役目の人
この掛け声を出しているのが、土俵中央で扇を持ちながら取り組みを進行している「行司(ぎょうじ)」です。
行司は、力士たちの戦いを裁く審判のような存在であると同時に、観客と試合の間をつなぐ語り手のような役割も果たしているんですね。
実は、行司にもさまざまな階級があり、装束の色や扇の形、名前の読み方にまで細かい伝統があります。
そうした役割を担う行司が、試合の雰囲気を盛り上げながら、試合の流れをつくるために声を発しているというのは、とても納得できる話ですよね。
掛け声は「合図」であり「応援」であり「進行」でもある
行司の掛け声は、単なる応援でもなく、ただの進行でもなく、その両方を兼ね備えた“合図”のようなもの。
静まり返る土俵に「はっけよい!」と声が響くことで、力士にも観客にも緊張感が伝わり、取り組みの空気がぐっと引き締まるんです。
まるで、静かに張り詰めた弦をひと声で震わせるような、そんな凛とした瞬間です。
なぜこの言葉なのか?という疑問こそが面白さの入口
そもそも「はっけよいって何語なの?」と思うところから、この掛け声の意味を探っていくと、相撲という文化の奥深さに自然と触れられるようになります。
掛け声ひとつをとっても、いくつもの説や由来が語り継がれていて、それを知るだけで観戦の目線が変わってくるんですよね。
「はっけよい」の意味は?代表的な3つの説をやさしく紹介
行司が力士に向かって発する「はっけよい」という掛け声、語感だけでもうすでにちょっとクセになりますよね。
でもこの言葉、音としては馴染みがあっても、具体的に「どういう意味なのか」となると、ふわっとしていて説明が難しい…。
じつはこの「はっけよい」にはいくつかの由来があるとされていて、相撲の中でもはっきりと“これ!”と断定されているわけではないんです。
だからこそ面白いし、知っておくと観戦中のちょっとした会話ネタにもなりますよ。
相撲の世界では、形式や言葉ひとつにも長い歴史があるため、時代とともに意味が変わってきたり、複数の解釈が共存しているケースも珍しくありません。
「はっけよい」もまさにそのひとつ。
ここでは、よく知られている代表的な3つの説を紹介していきます。
最も知られている説「八卦が良い(八卦良い)説」
今もっとも有力視されているのが、この「八卦が良い」説です。
「八卦(はっけ)」というのは、中国の古代思想からきた言葉で、自然界のあらゆる事象を8つのパターンで表したもの。
その“八卦が良い”状態、つまり万事うまく整っている様子を表す言葉が「はっけよい」に変化したとされているんですね。
ちょっと難しく感じるかもしれませんが、要は「今の勝負、良い状態だよ!」という意味合いで使われていたということ。
言葉の奥にある文化的背景を知ると、掛け声ひとつにも重みが出てきますよね。
言葉の変化で生まれたとされる「早く競いなさい」説
こちらはもっと日常的な感覚に近い説かもしれません。
「早く競え!」という意味の古い言い回し「はやきほへ」が「はっけよい」に転じたと考える説です。
土俵上で膠着状態が続いたときに
「はやく動きなさい!」
「試合を進めなさい!」
という意味で掛けられていたという背景があって、行司が力士に動きをうながすための“合図”としてしっくりきますよね。
私も個人的には、この説が一番情景としてイメージしやすいなと感じました。
気合いを込める意味を持つ「発気揚揚」説
3つ目は、漢字で書くと「発気揚揚(はっきようよう)」という、まるで漢詩のような語源説です。
これは“気を奮い立たせて、意気揚々と挑め”という意味が込められているとされていて、力士たちが真剣勝負に挑む精神状態を表しているとも考えられます。
ちょっと文学的ではありますが、たしかに土俵の緊張感とぴったり合っている気がしませんか?
どの説も“力士を促す言葉”として共通している意味
由来こそ違えど、これらの説に共通しているのは「力士を後押しする言葉」であるということ。
つまり、「はっけよい」というのは、技を出せとか、動けとか、がんばれとか、そういった“力士に向けたエール”のようなものなんです。
そう思って観戦してみると、「ああ、今行司さん、力士を応援してるんだな」って視点が加わって、相撲がより身近に感じられるようになりますよ。
「のこった」の意味は?わかりやすく言うと “残れ!”
「はっけよい」と並んで耳にすることの多い掛け声が「のこった」ですよね。
試合の終盤、土俵際でふたりの力士が必死に粘り合う場面で、何度も繰り返される「のこった、のこった!」。
あの声を聞くだけで、見ている側まで自然と手に汗握ってしまいます。
でも、この「のこった」って、文字通りの意味でいいの?それとも別の意味があるの?と、疑問に思ったことはありませんか?
実はこの「のこった」という言葉は、その響きの通り、力士が土俵の中に“残る”ことを促す掛け声なんです。
語源に複雑な説がある「はっけよい」と違って、「のこった」は意味もシンプルで、理解しやすいところが特徴といえます。
土俵際で踏ん張る力士を励ます言葉
力士たちは、土俵の端ギリギリで全身の力を振り絞って押し合い、引き合いを続けます。
そんなとき、「のこった」の声は、文字通り「頑張って残って!」という気持ちを込めた応援のようなもの。
相手に押し出されそうになりながらも、なんとか一歩踏ん張って土俵に残ろうとする力士を見守る、その瞬間を支える大切な一声なんですね。
安全性の視点から見ても大切な掛け声である理由
実はこの「のこった」の掛け声、力士を励ますためだけでなく、安全面への配慮としての意味もあるといわれています。
力士が技を仕掛ける際や、身体が密着して動きが止まってしまうと、急激な体勢の変化やバランスの崩れが起きることもありますよね。
そんな場面で「のこった」と声をかけることで、意識を集中させ、勝負への注意を促す効果もあるとされているんです。
行司の声に合わせて力士が気を引き締め、互いの動きを読み合う。
その呼吸の合間に交わされる「のこった」は、ただのルール上の掛け声ではなく、土俵という小さな舞台でくり広げられる大きな物語の一部なんです。
だからこそ、何度も繰り返されるこの言葉が、あの空間に自然と熱を生んでいるんだと、私は思うのです。
「はっけよいのこった」はどんな時に言うの?タイミングを具体的に解説
「はっけよいのこった!」という掛け声は、相撲の取り組みのなかで何度も耳にする言葉ですが、ただリズムよく叫ばれているわけではないんですよね。
行司がこの掛け声を発するタイミングには、ちゃんとしたルールと意味があるんです。
これを知っておくと、相撲観戦の見え方がグッと変わってきますし、子どもに聞かれても「こういう時に言うんだよ」って自信をもって教えられるようになりますよ。
掛け声は、勝負を支える“声のリズム”として機能していて、ただ音を楽しむものではありません。
どんな状況で、どんな意図で発せられているのかを知っておくと、試合の空気感や緊張の高まりまで感じ取れるようになるんです。
① 取り組み開始の合図として
まず最初に「はっけよいのこった!」が響くのは、力士が仕切り直しを終えて土俵に構えた瞬間。
行司が「はっけよいのこった!」と声を発した時点で、いよいよ本番の取り組みが始まる合図になります。
この一声で、場内の空気が一気に変わるんですよね。
見ているこちらも、「さあ始まるぞ」というスイッチが入るような、そんな特別な瞬間です。
② 力士の動きが止まった時に使われる理由
取り組み中、力士がまわしをしっかり掴んでにらみ合い、なかなか動き出さない場面がありますよね。
そんな膠着状態のとき、行司が再び「はっけよいのこった!」と声をかけます。
これはただの気合い入れではなく、「さあ動いて、技を仕掛けていこう」という、ある種の促しでもあるんです。
だからこそ、声が入ったあとに一気に動きが加速する場面も多くて、観ている側としてはワクワクが高まる瞬間でもあります。
③ 技がかかった時は「のこったのこった」に変わる
取り組みの中盤から終盤、どちらかの力士が仕掛けに転じたタイミングでは、掛け声が「はっけよいのこった」から「のこったのこった」に変化します。
このときの「のこった」は、攻める側にも、押し込まれている側にも「まだ終わりじゃないぞ、踏ん張れ!」というメッセージが込められているように感じられますよね。
まさに勝負の山場に響く、熱のこもった掛け声なんです。
行司が掛け声を出すときに意識しているポイント
行司によって声の出し方やタイミングには個性があるのも面白いところ。
扇子の使い方や発声の強弱、どこで声をかけるかといった“間”の取り方にも、それぞれの流儀があるそうです。
中には「この行司さんの声が好き」と、ファンから密かに推されている方もいるんですよ。
そんな違いにも注目してみると、相撲の楽しみ方がひとつ増えるかもしれません。
「はっけよいのこった」以外にもある!行司の掛け声いろいろ
相撲中継をじっくり見てみると、「はっけよいのこった」以外にも、さまざまな掛け声が聞こえてきますよね。
取り組みが始まるまでのあいだや、試合が始まる直前など、状況に応じて異なる言葉が行司から発せられています。
これらの声も、ただの演出ではなく、それぞれにきちんと意味や目的があるんです。
つまり行司の言葉は、取り組みのスタートからフィニッシュまでを一貫してサポートしている“土俵上の進行役”としての大切な仕事のひとつなんですね。
それを知るだけで、あの一見静かな立ち合い前の時間にも、じつは言葉によるやりとりが重ねられていることに気づくはずです。
ここでは、代表的な掛け声をいくつかピックアップして紹介していきますね。
試合前に聞こえる「見合って」「構えて」などの声
力士たちがまだ取り組みに入る前、土俵に向かって四股を踏み、塩をまき、気持ちを整えていく流れの中で、行司の「見合って」「構えて」といった声が挟まれます。
この掛け声は、いわば試合の準備段階における心構えを整える合図のようなもので、「しっかり相手を見て」「気を緩めず構えなさい」という意味が込められているんです。
子どものころ相撲ごっこをするときに、なんとなく真似して言っていたあの言葉にも、ちゃんと意味があったんですね。
時間いっぱいの「待ったなし」の意味
仕切りが何度か繰り返され、いよいよ本番が近づいてくると、行司が「時間いっぱい!」「待ったなし!」と声を張り上げます。
このときの「待ったなし」は、“もうこれ以上のやり直しはないよ”という合図で、次に動いたら取り組みが始まるというラストサインなんですね。
観客もこの声を聞くと、ぐっと集中して画面を見つめるようになります。
取り組みの流れと掛け声の関係をやさしく図解的に整理
試合前の流れを整理すると、
「見合って」「構えて」「にらみ合って」
↓
「時間です」「待ったなし」
↓
「手をついて」「腰を下ろして」
↓
「はっけよいのこった!」
というような順番になります。
この一連の流れの中で、行司が声をかけながら、力士の動きと気持ちの高まりを丁寧に導いていく姿は、見れば見るほど惚れ惚れしてしまうんですよね。
試合は一瞬で勝負がついてしまうこともありますが。
その裏側にはこんなにも細やかな準備と配慮が積み重ねられているんだなと思うと、相撲という競技への見方が変わってくるかもしれません。
知るともっと面白い!掛け声が相撲を“観やすくする”理由
相撲の取り組みは、派手な技や一瞬の勝負だけではなく、その前後に流れる“間”や“緊張感”がとても大事にされています。
だからこそ、静かに見える場面でも、耳をすませてみると行司の掛け声がしっかりと流れていて、それがまるでナレーションのように試合の流れをガイドしてくれているんです。
実際、掛け声の意味を知ることで、取り組みのどこに注目すればいいのか、どんな状況なのかが自然とわかるようになります。
「相撲ってなんとなく難しそう」と思っていた人も、掛け声をひとつの“サイン”として受け取れるようになると、一気に観戦がしやすくなるんです。
ここでは、そんな観戦の助けになる理由をわかりやすく紹介していきますね。
声の意味がわかると、取り組みの流れが理解しやすくなる
行司の掛け声は、言ってみれば相撲の“実況”のようなもの。
はじめて相撲を見るとき、力士たちの動きが止まっている時間が長く感じたり、「今ってどういう状況なの?」と戸惑うこともあるかもしれません。
でも、
「はっけよい」=促し
「のこった」=応援
「待ったなし」=開始の合図
というように言葉の意味がわかってくると、試合のどの場面にいるのかが自然と読み取れるようになるんです。
そうなると、静かな間も「次は何が起きるかな」とワクワクしながら観られるようになりますよ。
家族や子どもと観るときのちょっとした「教え方」
子どもと一緒に相撲を観ていると、意外なタイミングで「今なんて言ったの?」と聞かれること、ありますよね。
そんなとき、掛け声の意味を少しでも知っていれば、「これはね、がんばれって意味なんだよ」とやさしく答えられるし、そこから会話も広がっていきます。
たとえば「八卦ってね、昔の人が自然を表すのに使ったんだって」なんて話を添えると、大人も子どもも一緒に学びながら楽しめる時間が生まれるかもしれません。
伝統文化に自然と触れられる機会としても、行司の掛け声はいい“入口”になるんですよね。
まとめ:「はっけよいのこった」がわかると相撲の楽しみがぐっと広がる
昔はなんとなく聞いていた「はっけよいのこった」の掛け声。
けれどその一言に込められた意味や背景を知ってみると、ただの雰囲気づくりの言葉じゃないってことが見えてきましたよね。
行司の掛け声は、土俵の空気を引き締めるための合図であり、動きを促す指令であり、ときにはふたりの力士に向けたエールでもあったりして。
たったひと声で、あれだけの緊張感をコントロールしているなんて、本当にすごいなって思います。
正直に言うと、私自身も昔は「相撲って地味かも…」なんて思っていた時期がありました。
でも、子どもに「これってどういう意味?」と聞かれて調べていくうちに、いつのまにかハマってしまって。
掛け声の意味を知るだけで、立ち合いの静寂や、動きの間の緊張感までもが“わかるもの”に変わっていったんです。
そうなると、観ている時間そのものがどんどん面白くなっていくから不思議ですよね。
大げさかもしれないけれど、「意味を知る」って、それだけで世界の見え方を変えてくれる力があると思うんです。
だからこそ、次に相撲を見るときは、ぜひ行司の声にも耳をすませてみてください。
「はっけよい」「のこった」その一言の裏に、どんな空気が流れているのか想像してみるだけで、きっと相撲の楽しみ方がひとつ深まります。
そんなふうにして、親子で話題にしたり、誰かに「知ってる?」と話せるようになったら、もっともっと身近に感じられるようになりますよね。

