幼稚園の登園時、「行きたくない!」「ママがいい!」と泣き出してしまうお子さんの姿に、心を痛めてしまう保護者の方はとても多いと思います。
とくに入園したばかりの春先や、長期休み明けなどは、いつもの生活リズムが変わりやすく、子どもの気持ちも不安定になりがちです。
「また今日も泣いてしまった…」
「このままずっと泣き続けるんじゃないか」
と、毎朝の送り出しがつらくなっているご家庭もあるのではないでしょうか。
子どもの泣く姿を見ると、親としては
「どうにかして泣かずに登園させたい」
「他の子はもう泣いてないのに、うちの子だけ…?」
と焦ったり、不安になったりしますよね。
でも、実はそう感じるのはとても自然なこと。
大切なのは、子どもが泣いている背景にどんな気持ちがあるのかを理解し、やさしく見守っていくことなんです。
この記事では、子どもが幼稚園で泣く理由や、その泣く時期がどのくらい続くのか?
そして保護者としてどんなふうに関わっていけばいいのかを、元幼稚園の先生の視点からやさしく解説していきます。
読んでいただくことで、「あ、うちの子だけじゃないんだ」とホッとしたり、「こうすればいいのかも」と前向きなヒントが見つかったりするかもしれません。
少しでも心配な気持ちが軽くなって、お子さんとの毎日が笑顔で満たされるように。。。そんな思いを込めて、お伝えしていきますね。
子どもが幼稚園で泣くのはどうして?その理由とは
環境の変化にびっくりしてしまうから
幼稚園に入ると、それまでずっとおうちの人と過ごしていた子どもたちは、急に知らない先生や初めて会うお友だちと一緒に長い時間を過ごすことになります。
それまで毎日、安心できる家庭の中で過ごしていた子どもにとって、これはとても大きな環境の変化です。
初めての園生活は、子どもにとって刺激がいっぱい。
園の雰囲気や先生の声、集団での活動、決まった時間に動く生活リズムなど、何もかもが新しくて緊張の連続です。
そうしたなかで「泣く」という行動は、決してわがままではなく、
「今の環境が不安だよ」
「安心できる場所に戻りたいな」
という純粋な気持ちの表れなんですね。
なかには、朝だけでなく、園内でも思い出したように泣き出してしまう子もいます。
それは「どうしてママと離れたんだろう」「なんだか不安だな」と、心が揺れている証拠。
そうした揺れを経験しながら、子どもは少しずつ園に慣れていくんです。
気持ちをうまく言えなくて泣いちゃうこともあるんです
まだ言葉の発達が途中の年齢では、自分の気持ちをしっかりと言葉にして伝えるのはなかなか難しいものです。
うまく言えない不安やもやもやを「泣く」という形で出していることもあります。
とくにおとなしくて慎重な性格の子は、初めての環境にすぐに慣れるのが難しい傾向があります。
周りの子が元気いっぱい遊んでいる中で、気持ちが追いつかずにポロポロと涙をこぼしてしまうことも珍しくありません。
また、言葉では「いや」「行きたくない」としか言えなくても、その背景には
「何をしたらいいかわからない」
「失敗したらどうしよう」
といった不安や戸惑いが隠れていることも。
そんなときは、子どもの心の声に耳を傾けることがとても大切です。
泣くことでしか気持ちを伝えられない子どもたちに対して、大人が「泣くのはダメ」と決めつけるのではなく。
「泣いてもいいんだよ。ちゃんとわかってるよ」と受け止めてあげることが、子どもにとって安心感につながります。
幼稚園で泣くのはどのくらいの期間続くの?
入園後1~2ヶ月が目安です
ほとんどの子は、入園してから1~2ヶ月ほど経つと、少しずつ幼稚園という新しい環境に慣れていきます。
最初は泣いていた子どもたちも、毎日の流れや園での過ごし方に慣れてくると、少しずつ不安が落ち着いてきて、自分から先生やお友だちと関わろうとする姿が見られるようになります。
とくにゴールデンウィークが終わるころには、朝の登園時に笑顔が見られたり、自分から靴を履いて玄関に向かうなど、成長のサインが現れることが多いんです。
「あんなに泣いていたのに、今ではお友だちと手をつないで教室に行けるようになりました」といった変化は、保護者にとっても大きな喜びですね。
それでも、すべての子どもが同じペースで慣れていくわけではないので、「うちの子はまだ泣いてる…」と心配しすぎる必要はありません。
子どもによってはもう少し時間がかかることもありますが、それは決して遅いわけではなく、その子のペースでしっかりと前に進んでいる証拠です。
長いお休み明けにまた涙が出てしまうこともあります
一度泣かずに元気に通えるようになった子でも、夏休みや冬休み、または春休みなどの長いお休みのあとには、また登園を嫌がって泣いてしまうことがあります。
これは、生活リズムが崩れていたり、家庭での安心感が心地よくて、再び環境の変化に不安を感じているからなんです。
特にお休み中にたっぷり甘えて過ごしていた子どもにとっては、「またママと離れなきゃいけない」という気持ちが大きくなってしまうことがあります。
でも、これは一時的なもの。
多くの場合、数日から1週間ほどでまた慣れていくことが多いので、焦らずに見守ってあげましょう。
「また泣いてしまった」と思っても、決して振り出しに戻ったわけではありません。
子どもはしっかりと園生活を経験してきているので、少し時間をかければ、再び笑顔で登園できるようになりますよ。
「行きたくない!」と泣くとき、親はどうしたらいい?
気持ちを受け止めてあげよう
「行きたくない」と言われたら、まずは「そうなんだ、ママといたいよね」と、子どもの気持ちにやさしく寄り添ってあげてくださいね。
このとき、無理に励ましたり、「大丈夫だから行こうよ」と説得しようとするよりも、「そう感じるんだね」と共感してあげることがとても大切です。
子どもは、自分の気持ちをちゃんと受け止めてもらえたと感じると、それだけで安心感を得ることができます。
「ママはわかってくれてる」と思えると、不安な気持ちが少しずつほぐれていくんですね。
ときには、泣きながら「行きたくない!」と強く言うこともありますが、それは親に自分の不安や寂しさをわかってほしいというサインでもあります。
そんなときは、やさしく抱きしめながら、
- 「幼稚園が不安なんだね」
- 「ママと離れるの寂しいよね」
このように共感をもって接することで、子どもとの信頼関係もより深まり、「またがんばってみようかな」という前向きな気持ちが芽生えてくることもあります。
焦らずに、一歩ずつ子どもの気持ちに寄り添っていきましょうね。
登園時は明るく笑顔で送り出すのがコツ
泣いていると、つい時間をかけてなだめたくなりますが、実は逆効果になってしまうこともあるんです。
子どもが泣いている姿を見ると、「大丈夫?」「ママはここにいるよ」と時間をかけて声をかけたくなります。
ですが、そうすることでかえって子どもの気持ちが切り替えづらくなってしまう場合があります。
登園時には、「いってらっしゃい!ママもお仕事がんばるよ」「帰ってきたらいっぱい遊ぼうね」と、できるだけ明るく、そして短めに声をかけてあげるのがポイントです。
短い言葉の中に愛情と信頼を込めて送り出すことで、子どもも「ママはちゃんと見てくれているんだ」「自分もがんばろう」と、前向きな気持ちを持てるようになります。
もし泣いて離れられないような日が続いても、担任の先生にスムーズに引き渡しをお願いして、
「先生にお願いね!」
と笑顔でバトンタッチできると、子どもにとっても安心感がありますよ。
帰ってきたらたっぷり甘えさせてあげよう
幼稚園で一日がんばってきた子には、帰ってきたあとに思いっきり甘えさせてあげることがとても大切です。
子どもにとっては、外でがんばったあとの「おうち時間」が、心を癒す時間でもあるんですね。
「今日はどうだった?」
「どんなことしたの?」
と穏やかな口調で話しかけたり、ぎゅっと抱きしめたり、ひざの上に乗せてのんびり過ごすだけでも、子どもは安心して心を開いてくれます。
「ちゃんと見てくれてる」「ママに甘えていいんだ」と感じることで、「明日もがんばろう」という気持ちに自然とつながっていくんです。
もし子どもが疲れて機嫌が悪かったり、話したくなさそうなときは、無理に聞き出そうとしなくても大丈夫。
まずは「がんばったね」と笑顔で迎えてあげることが、子どもにとってのごほうびになりますよ。
幼稚園の先生とも相談してみよう
泣く日が続くと「うちの子だけ…?」と不安になってしまいますよね。
朝の登園が毎日つらく感じられてくると、「どうしたらいいんだろう」「このままで大丈夫かな」と、心配や戸惑いの気持ちでいっぱいになることもあると思います。
そんなときは、一人で悩みを抱え込まずに、担任の先生や園のスタッフに思い切って相談してみてくださいね。
園の先生たちは、たくさんの子どもたちを見てきた経験がありますので、
- 今のお子さんの様子がどんな状態なのか?
- どう見守っていけばいいのか?
「園ではどんなふうに過ごしていますか?」
「泣いている時間は長いですか?」
「お友だちとはどんな様子ですか?」
など、気になることは遠慮なく聞いてみましょう。
先生から具体的な様子を聞けると、「あ、家とは違ってちゃんと楽しめてるんだ」と安心できる場面も多いはずです。
また、先生と情報を共有しておくことで、家庭と園とで一貫した対応ができ、子どもにとってもより安心できる環境づくりにつながりますよ。
まとめ|子どものペースを信じてゆっくり見守ろう
子どもが泣いてしまうのは、ただ甘えているのではなく、自分なりに新しい環境に順応しようとがんばっている証なんです。
幼稚園という初めての社会に出て、たくさんの刺激や変化の中で子どもなりに一生懸命適応しようとしています。
それでも思いどおりに気持ちを整理できず、不安や戸惑いが涙になってしまうこともあるんですね。
まわりと比べてしまうと、「どうしてうちの子はまだ泣くんだろう」「他の子はもう慣れてるのに」と焦る気持ちが出てくるかもしれません。
でも、子どもの成長には一人ひとり違ったリズムがあって、早く慣れる子もいれば、じっくり時間をかけて慣れていく子もいます。
だからこそ、「この子のペースで大丈夫」と信じて、焦らずゆっくり見守ってあげることがなにより大切です。
泣きながら登園していたお子さんが、ある日ふと
「今日は幼稚園に行くの楽しみ!」
「ママ、早く行こうよ!」
と笑顔で玄関に向かう姿を見せてくれる日が必ずやってきます。
そのときの成長の喜びは、これまでの悩みや不安を吹き飛ばしてくれるような、かけがえのない瞬間になるでしょう。
その日が来るまで、親子で手を取り合って、毎日を少しずつ進んでいきましょうね。