
最近、9歳前後のお子さんを見ていて、
「あれ、急に勉強でつまずくようになったな」
「前は素直だったのに、口答えが増えた」
「なんだか自信をなくして元気がない」
と、ちょっと気になっていませんか。
「これってもしかして、9歳の壁ってやつ?」と検索して、ここにたどり着いた方も多いと思います。
先にお伝えすると、9歳の壁とは、勉強の内容が目に見えないものを頭の中で考える段階に上がる時期と、自分を客観的に見られるようになって友だちと比べてしまう時期が重なって、つまずきや自信の揺らぎが起こりやすくなる成長の節目のことです。
何か病気になったわけでも、性格が悪くなったわけでもありません。
そして大事なのは、これが特別なことではなく、多くの子が通っていく道だということ。
親の育て方だけが原因ではありませんし、関わり方を少し変えてあげれば、子どもは自分の力でちゃんと越えていけます。
焦らなくて大丈夫ですよ。
むしろ、わが子が一段大きくなろうとしている、その途中なんです。
この記事では、なぜ9歳の壁が起きるのかという原因から、勉強や心に表れる具体的な変化、そして今日から家庭でできる寄り添い方まで、まるごとお伝えします。
読み終わるころには、「なんだ、そういうことだったのか。
これなら落ち着いて見守れそう」と、肩の力がふっと抜けているはずです。
この記事でわかること
- 9歳の壁とは何かと、起こりやすくなる3つの原因
- 勉強と心に表れやすい具体的な変化
- 今日から家庭でできるやさしい寄り添い方
- やってはいけない関わり方と、心配なときの相談先
9歳の壁は小学3~4年生ごろにつまずきやすくなる成長の節目
「言葉の意味だけ知りたいのに、どうして原因から?」と思うかもしれません。
でも、なぜこの時期につまずきやすくなるのかが腑に落ちていると、わが子の様子を見て不安になったときに、「ああ、これはあの理由か」と落ち着いて受け止められるようになるんです。
ここでは、9歳の壁が起きやすくなる理由を、3つの角度からほどいていきますね。
勉強が目に見えないものを頭の中で考える段階に変わるから
まず大きいのが、勉強の中身がガラッと変わることです。
低学年のうちは、おはじきを数えたり、ものを見て数えたりと、目の前にあるものを使って考える勉強が中心でした。
ところが3~4年生になると、分数や小数、面積、がい数など、目に見えないものを頭の中で思い浮かべて考える勉強がぐっと増えてきます。
たとえば分数は、「1を3つに分けたうちの1つ」というように、頭の中でイメージを操作しないと理解しづらいですよね。
算数だけではありません。
国語では登場人物の気持ちを読み取ったり、理科では実験から「どうしてそうなるのか」を考えたり、社会では地図や図表を読んだりと、どの教科でも「目に見えないことを考える力」が求められ始めます。
子どもの考える力の発達を研究した心理学者ピアジェも、9~10歳ごろは、具体的なものに頼って考える段階から、頭の中だけで筋道を立てて考える段階へと移っていく過渡期にあたるとしています。
つまり、つまずくのは頭が悪いからではなく、ちょうど考え方が一段上がろうとしている、その途中だからなんです。(大人でも、新しいやり方に慣れるまではぎこちないですもんね)
自分を客観的に見られるようになり友だちと比べてしまうから
もうひとつ大きいのが、心の成長です。
8歳ごろまでの子どもは、わりと自分中心の世界で生きています。
それが9歳ごろになると、自分を一歩引いたところから客観的に見られるようになるんです。
これ自体は、とても大きな成長です。
ただ、そうやって自分が見えるようになると、同時に「まわりの子」も見えてきます。
「あの子は計算が速いのに、自分は遅い」「○○ちゃんはすぐ覚えられるのに、自分はできない」というふうに、友だちと自分を比べてしまう。
文部科学省も、9歳以降は自分を客観的にとらえられるようになる一方で、発達の個人差も目立ってきて、自分に自信が持てず劣等感を抱きやすい時期だと説明しています。
だから、「どうせ自分なんて」と急に弱気なことを言い出したり、元気がなくなったりするのは、心がだらしなくなったからではありません。
自分のことがよく見えるようになった、成長の裏返しなんですね。
ここを知っているだけで、わが子への見方がやさしくなれる気がしませんか。
もともとは聞こえに障害のある子の学びから生まれた言葉とされるから
「9歳の壁」という言葉が、そもそもどこから来たのかも知っておくと、理解が深まります。
この言葉は、聴覚に障害のある子どもたちの教育の現場から生まれたとされています。
耳の聞こえにくい子が、知的な遅れがないのに、小学3~4年生で習う抽象的な内容の習得でつまずきやすい、という現象から名づけられたと言われています。
つまり9歳の壁は、もともと「この時期の学びには、誰にとっても乗り越えるべき難しさがある」ということを表した言葉なんです。
今では、聞こえに関係なく、3~4年生ごろの子ども全般がぶつかりやすい節目として広く使われるようになりました。
言葉の成り立ちまでさかのぼると、「うちの子の出来が悪いから壁にぶつかった」という話ではないことが、よくわかります。
この時期の学びそのものに、自然と難しさがある。
だからこそ、つまずいても落ち込みすぎず、「ここはみんな大変なところなんだな」と構えておけば大丈夫です。
むしろ、壁にぶつかれたということは、それだけ難しいところまで進んできた証拠でもあります。(名前がつくくらい、昔から知られている”あるある”なんですね)
9歳の壁で子どもに表れやすい勉強と心の変化
原因がわかったところで、次は「じゃあ実際、うちの子にはどんな様子が出るの?」というところを見ていきましょう。
9歳の壁の表れ方は子どもによってさまざまですが、よくあるのは大きく分けて勉強・心・態度の3つの場面です。
当てはまるものがあるか、わが子を思い浮かべながら読んでみてくださいね。
ついやりがちなNGの関わり方も最後にお伝えします。
算数の分数や小数でつまずいて勉強に苦手意識が出る
いちばん気づきやすいのが、勉強面のつまずきです。
とくに多いのが算数で、分数や小数、面積、文章題のあたりで急に手が止まる子が増えます。
それまではスラスラ解けていたのに、急にバツが増えてくると、親としてもドキッとしますよね。
でも、ここで知っておいてほしいのは、つまずきの正体が「今やっている単元」だけにあるとは限らない、ということ。
たとえば分数でつまずいている子は、その前のかけ算やわり算の理解があやふやなまま進んでしまっている、ということがよくあります。
つまずいた場所と、本当の原因の場所がずれているんですね。
だから、「なんでこんなのもわからないの」と今の単元だけを責めても、なかなか解決しません。
一度立ち止まって、「どこからわからなくなったのかな」と一緒にたどってあげると、案外あっさり糸口が見つかることがあります。
苦手意識がつく前に、「わかった!」の感覚を取り戻してあげることが大切です。
「どうせ自分なんて」と自信をなくし元気がなくなる
勉強だけでなく、心の面にサインが出ることもあります。
さっきお話ししたように、この時期の子は友だちと自分を比べてしまいがち。
その結果、「どうせ自分なんてできない」「やっても無駄」と自信をなくしてしまうことがあります。
口数が減ったり、好きだったことに興味を示さなくなったり、「学校つまらない」と言い出したり。
こうした変化は、親からすると「やる気がなくなった」「反抗的になった」と見えてしまうこともあります。
でも本当のところは、自分のできないところばかりが見えて、苦しくなっているのかもしれません。
ここで「もっとがんばりなさい」とハッパをかけると、かえって追い詰めてしまうことも。
今は、できないことを指摘するより、できていることに目を向けてあげたい時期です。(親も、子どもの元気がないと、こっちまで胸がきゅっとなりますよね)
口答えが増えて反抗的になる中間反抗期との重なり
「最近、やたらと口答えしてくる」「言うことを聞かなくなった」と感じている方も多いはずです。
じつはこの時期は、中間反抗期と呼ばれる時期と重なりやすいんです。
イヤイヤ期(第一次反抗期)と、思春期の反抗期(第二次反抗期)のあいだに来る、ちょっとした反抗の時期ですね。
「うるさいな」「わかってるってば」なんて生意気なことを言われると、ついカチンときてしまいますが、これも自分の考えを持ち始めた成長の証。
親にベッタリだった子が、少しずつ自分の世界を持ち始めているサインでもあります。
友だちとの仲間意識が強くなって、親より友だちを優先するようになるのも、この時期によく見られます。
頭ごなしに「口答えするな!」と押さえつけると、関係がこじれやすくなります。
生意気な物言いにはイラッとしても、その奥にある「自分なりの考え」は、いったん受け止めてあげたいところです。
「うるさいなあ、わかってるって」と言い返されたときは、正直ムッとしました。
でも一度深呼吸して「そっか、もう自分でわかってるんだね」と返したら、バツが悪そうにしながらも宿題を始めて。
押さえつけるより、いったん受け止めたほうが早いんだと、子どもに教わった気がします。
親がついやってしまいやすい逆効果の関わり方
よかれと思ってやったことが、かえって子どもを追い詰めてしまう。
9歳の壁の時期には、そんな”うっかりNG”が起こりがちです。
代表的なものを挙げておきますね。
- きょうだいや友だちと比べる(「お兄ちゃんはできたのに」はとくに心に刺さります)
- 結果やテストの点数だけを見て叱る
- 先回りして答えを教えたり、手伝いすぎたりする
- 「なんでできないの」と原因を本人に問い詰める
でも、比べられたり結果だけで叱られたりすると、子どもはますます自信をなくしてしまいます。
先回りのしすぎも、「自分で考える力」が育つチャンスを奪ってしまうことに。
もし思い当たっても、自分を責めないでくださいね。
気づいた今から変えていけば、ぜんぜん間に合いますから。
9歳の壁を家庭で支えるための寄り添い方
では、具体的にどう関わってあげればいいのでしょうか。
難しいことは必要ありません。
ちょっとした声かけや、ほんの少しの工夫で、子どもはぐっと楽になります。
ここでは、今日からすぐに試せる3つの寄り添い方をお伝えします。
どれも、特別な道具もお金もいりませんよ。
その子の過去と今を比べてできたことを具体的にほめる
いちばん大切にしてほしいのが、ほめ方です。
ポイントは、よその子とではなく、その子の「昨日まで」と「今」を比べてほめること。
これを「縦の比較」と呼んだりします。
「○○ちゃんよりできた」という横の比較は、勝ったときはいいですが、負けたときに自信をぐらつかせます。
でも、「先週は3問だったのに、今日は5問もできたね」「前は逃げてた漢字の練習、今日は自分から始めてたね」というふうに、その子自身の成長を見つけてあげると、誰とも比べずに、純粋に「できた」を実感できるんです。
しかも、ただ「えらいね」より、「どこがどうよかったか」を具体的に伝えるのがコツ。
「集中して最後までやりきったね」と、本人が思い出せる場面を添えると、ぐっと心に届きます。
学校の先生がほめていたことを、あとからさりげなく伝える”かげぼめ”も効果的ですよ。(直接ほめられるより、なんだか効くんですよね、これ)
苦手な勉強は図やものを使って見える化して一緒に取り組む
勉強でつまずいているときは、目に見えない概念を、目に見える形にしてあげるのがいちばんです。
9歳の壁の正体は「抽象的なことが頭の中で扱いきれない」ことなので、それを具体物に戻してあげればいいわけですね。
たとえば分数なら、ピザやケーキ、折り紙を実際に分けてみる。
「ホールのケーキを4人で分けたら、ひとり分はこれだよね。
これが4分の1」と見せれば、紙の上の数字より何倍もわかりやすくなります。
小数なら計量カップの水のかさ、面積ならお風呂のタイルやマス目のノート、というように、身近なもので置き換えてみてください。
算数以外でも、国語の心情なら「自分だったらどう思う?」と置き換えると、ぐっと考えやすくなります。
このとき大事なのは、親が教え込むのではなく、一緒に手を動かして「一緒に考える」こと。
答えをすぐ教えず、「どうなると思う?」と問いかけながら進めると、子どもは自分で気づく喜びを味わえます。
わかった瞬間の「あ、そういうことか!」という顔は、親にとってもごほうびですよね。
うちの子は分数のところで完全に固まっていたのですが、夕飯のピザを切り分けながら「これで8分の1ね」と話したら、急に目が輝いて。
次の日のプリントは自分から机に向かっていました。
紙の上だと「わからない」だったものが、お皿の上だと「わかる」になるんだなと、私のほうが学ばされました。
手を出しすぎず見守りながら反抗にも冷静に向き合う
最後は、距離感のお話です。
この時期は、親が近すぎても遠すぎても、子どもはやりにくさを感じます。
理想は、手は出しすぎず、でも目はちゃんとかけておくという、つかず離れずの距離です。
宿題でつまずいていても、すぐに答えを教えず、ヒントだけ出して待ってみる。
失敗しそうでも、危なくないことなら、あえて見守ってみる。
自分でやり切れた経験が、自信のもとになります。
手や口を出したくなる気持ちをぐっとこらえるのは、親にとってけっこうな修行なんですけどね。(見てると、つい言いたくなっちゃうんですよ)
反抗的な態度にも、頭ごなしに怒鳴り返すのではなく、「そう思うんだね」といったん受け止めてから、ダメな理由は理由として落ち着いて伝える。
感情でぶつかるのではなく、一人の人として向き合うイメージです。
完璧にできなくて大丈夫。
「今日はうまく聞けなかったな」という日があっても、また次の日にやり直せばいいんです。
9歳の壁について親が気になりやすい疑問
ここまで読んで、「だいたいわかったけど、もう少し聞きたいことがある」という方もいるはずです。
最後に、親御さんからよく出る疑問を3つ、Q&A形式でお答えしておきますね。
ちょっとした疑問が解けると、もっと気持ちが軽くなりますよ。
9歳の壁と10歳の壁や小4の壁は何が違うのか
「9歳の壁」「10歳の壁」「小4の壁」…いろいろな呼び方があって、混乱しますよね。
結論から言うと、これらはほぼ同じ時期の、似たような現象を指す別の呼び名だと考えて大丈夫です。
9歳の壁も10歳の壁も、小学3~4年生ごろに勉強や心がつまずきやすくなることを指していて、中身はほとんど同じ。
ただ「小4の壁」というときには、もうひとつ別の意味で使われることもあります。
それは、放課後の過ごし方の問題です。
学童保育が小3までで終わる地域もあり、4年生になって子どもの放課後の居場所に親が悩む、というケースですね。
なので、「小4の壁」という言葉が出てきたら、それが勉強や心の話なのか、放課後の過ごし方の話なのか、文脈で見分けるとすっきりします。
呼び名は違っても、子どもが一段成長する節目だという点は共通しています。
反抗期との違いといつ頃落ち着くのか
「これって反抗期と何が違うの?」という疑問もよく聞きます。
9歳の壁は、反抗期そのものというより、勉強・心・人間関係をふくめた、もっと幅広い成長の節目です。
その中の一部として、中間反抗期と呼ばれる反抗的な時期が重なってくる、というイメージですね。
つまり、反抗的な態度は9歳の壁の「一面」ではありますが、すべてではありません。
勉強のつまずきや自信のゆらぎも、同じ時期に一緒に起こってくる、というわけです。
「いつ落ち着くの?」という点については、正直なところ子どもによってかなり幅があります。
数か月で落ち着く子もいれば、ゆっくり時間をかけて越えていく子もいます。
「○歳になればピタッと終わる」というものではないので、期限を決めて焦らないことが大切です。
大きくなる途中の、長い目で見てあげたい時期だと考えてくださいね。
心配が強いときに家庭だけで抱えないための相談先
ここまで「多くの子が通る道」とお伝えしてきましたが、それでもあまりに長くつらそうだったり、学校に行きたがらなかったり、食欲や眠りに影響が出ていたりと、気がかりが強い場合もありますよね。
そんなときは、家庭だけで抱え込まないでください。
まずは、いちばん身近な担任の先生に学校での様子を聞いてみるのがおすすめです。
家では見えない一面がわかることもあります。
学校にはスクールカウンセラーがいることも多く、親だけで相談することもできます。
自治体の教育相談窓口や、子育ての相談窓口も心強い味方です。
相談することは、決して大げさなことでも、親として失格なことでもありません。
むしろ、子どものことを思えばこその、賢い一手です。
一人で悩まず、頼れるところに頼る。
それも、立派な寄り添い方のひとつですよ。
まずは連絡帳に一行、気になる様子を書いて先生に伝えてみる。
そんな小さな一歩からで十分です。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- 9歳の壁とは小学3~4年生ごろにつまずきやすくなる成長の節目
- 勉強が目に見えないものを頭で考える段階に変わるのが原因のひとつ
- 自分を客観視できるようになり友だちと比べて劣等感を持ちやすくなる
- もとは聞こえに障害のある子の学びから生まれた言葉とされる
- 算数の分数や小数でつまずき勉強に苦手意識が出やすい
- 自信をなくしたり口答えが増えたりするのも成長のサイン
- きょうだいや友だちと比べる、結果だけで叱るのは逆効果
- よその子とではなくその子の過去と今を比べて具体的にほめる
- 苦手な勉強は図やものを使って見える化して一緒に考える
- つらさが強いときは担任やスクールカウンセラーに相談してよい
勉強でつまずいたり、自信をなくしたり、生意気を言ったり。
どれも、心と頭がぐんと成長している証拠なんですね。
親の育て方が悪かったわけでも、わが子だけが特別なわけでもありません。
だからどうか、できないところを探して焦るより、できたところを見つけて声をかけてあげてください。
よその子とは比べず、昨日のわが子と今日のわが子を比べて。
手は少し引いて、目はちゃんとかけて。
そんなふうに寄り添ってあげられたら、子どもはきっと、自分のペースで壁を越えていきます。
「うちの子なりに、ちゃんと前に進んでるんだな」。
そう思えるようになったら、この時期がぐっと愛おしく感じられるかもしれません。
まずは今日、ひとつだけ、「できたね」を見つけて伝えてみませんか。
それだけで、お子さんの明日が、少し軽くなるはずですよ。