身内の不幸は、ある日突然やってきます。
心の準備もできていないまま、葬儀の段取りや家族のフォロー、そして職場への連絡など、現実的な対応を求められる場面が一気に押し寄せてきます。
とくに悩ましいのが「忌引き」の制度。
名前は知っていても、いざ自分がその立場になると
「どのくらい休めるの?」
「申請方法は?」
「土日を挟んだらどうなるの?」
といった疑問が次々とわいてきます。
わたし自身も過去に、祖母を亡くしたとき、気持ちの整理もつかないまま職場に連絡を入れ、慣れない書類対応に追われた記憶があります。
この記事では、忌引き休暇の基本的な仕組みや注意点を、制度的な側面から丁寧に解説しながら、実際にどんな風に行動すればいいのかというリアルな視点も交えてお伝えしていきます。
会社によって制度に違いがある部分も多いため、「これが絶対に正解」という答えはありませんが、知っておくことで心が少し落ち着くこともあるはずです。
忌引き休暇に土日や定休日は含まれるの?
「3日間の忌引き」でも月曜は出勤?と戸惑う理由
たとえば、金曜日にご家族が亡くなり、その日の午後からお通夜、翌日の土曜に葬儀、そして日曜が定休日だったとします。
この場合「3日間の忌引き休暇」と聞くと、月曜まで休めると考えてしまいがちですが、実際には
- 金曜
- 土曜
- 日曜
これは「忌引き休暇の日数のカウント方法」が企業の就業規則に基づいて定められているためです。
忌引きの“日数”は、実際に会社を休める“勤務日数”ではなく、暦上の日数でカウントされるのが通例となっています。
土日や祝日が含まれる理由と企業側の事情
「でも、それって実質的に1日しか休めないってこと…?」と戸惑ってしまう気持ちはとてもよくわかります。
実際に、わたしも以前、身内の不幸が日曜日に重なったことで、会社から「もう忌引きは使い終わっています」と言われて驚いた経験があります。
もちろん企業によって運用のルールは異なるため、なかには勤務日だけをカウントする会社もありますし、葬儀の予定や家庭の事情に応じて柔軟に対応してくれる場合もあります。
とはいえ、多くの企業では「暦通りの日数」で忌引きを計算するのが一般的であるため、「週末を挟む場合は実質的にほとんど休めない」というケースも少なくありません。
この制度は、ある意味で“形式的”な日数設定に見えてしまうかもしれませんが、その裏には「公平性」や「業務調整のしやすさ」といった職場内の事情があるのも事実です。
自分や家族の心を守るために、知っておくべきこと
だからこそ、忌引き休暇が必要な状況になったときには、早めに就業規則を確認したり、直属の上司や人事担当者に確認を取っておくことが大切です。
「落ち着いたら聞こう」ではなく、むしろ不安があるうちに聞いておくことで、後から心や体に負担がかかるのを防ぐことにもつながります。
また、もしも忌引き休暇だけでは心身ともに回復が難しいと感じた場合は、有給休暇を併用するという選択肢もあります。
実際に、わたしの知人は「喪主の役目が終わってから、ようやく悲しみが押し寄せてきた」と言って、数日間有給を使って心を落ち着ける時間を取っていました。
忌引き休暇は制度として存在していますが、大切なのは数字だけではなく、「自分が安心してお別れと向き合える時間をどう確保するか」という視点です。
制度の中身を知ることは、その選択肢を広げる第一歩です。
土日や定休日が含まれるかどうかをただ知るのではなく、その背景にある意図や現実的な働き方とのバランスを理解しながら、今できる最善の行動を選んでいきましょう。
忌引き日数は故人との関係によって変わる
すべての人に同じ日数が与えられるわけではない理由
「忌引き=何日休めるか」と考えたとき、真っ先に気になるのはその日数ですよね。
でも実は、この忌引きの取得日数は、一律で決まっているわけではなく、亡くなった方との関係性によって大きく変わります。
配偶者や実の親など、生活や精神面で密接な関係にある家族を亡くした場合には、企業の就業規則で最長10日間の忌引きが認められることが多くなっています。
これは喪主になる可能性が高いことや、葬儀・法要の準備、各種手続き、そしてなにより深い悲しみによる心身の負担を考慮して設定されているものです。
一方で、祖父母や兄弟姉妹、配偶者の親などの場合は、3日間程度の忌引きとする企業が多く、子どもの場合は中間の5日間前後とされる傾向があります。
とはいえ、これらはあくまで一般的な企業規定の目安であり、すべての会社がこの日数を採用しているわけではありません。
だからこそ、自分の勤め先の就業規則を一度確認しておくことが、本当に大切なのです。
「日数が足りない」と感じたときの心の葛藤
たとえば、配偶者を亡くして10日間の忌引きをもらったとしても、「とてもそんな日数じゃ気持ちの整理なんてつかない」と感じる人も少なくありません。
逆に、祖父母の忌引きが3日間と聞いて「でも遠方の田舎で葬儀をするから移動だけで2日かかるのに…」と戸惑ったという声もよく聞かれます。
制度は制度として存在しますが、現実はそう単純ではないものです。
自分の気持ちと制度とのズレに苦しむ人も多く、「職場の理解がないと乗り越えられなかった」というケースもあります。
こうしたときに必要なのは、制度の枠内でどう補えるかを冷静に考えること。
たとえば、忌引き休暇だけでは足りない場合には、有給休暇や特別休暇を組み合わせることで、必要な日数を確保することが可能です。
上司に事情を丁寧に伝え、相談する勇気も、時には自分や家族を守る大切な手段になります。
迷ったときは「就業規則」と「人事部」に頼ろう
忌引きの制度は法的に義務づけられているものではなく、各企業が独自に定めている就業規則に基づく社内制度です。
つまり、同じ「3日間の忌引き」でも、会社によっては土日を除くカウントだったり、追加申請ができたりと、その内容は実にさまざまです。
「これは何日休めるの?」「喪主じゃないとダメなの?」といった不明点があるときは、迷わず人事部や総務部に相談することが一番です。
悲しみの中で、曖昧な情報のまま判断して後悔することのないよう、きちんと確認することが、あなたの負担を少しでも軽くする道になるはずです。
また、会社によっては「〇親等以内の親族のみ忌引き対象」としている場合もあるため、
- いとこ
- 義兄弟
- 内縁の配偶者の家族
会社への忌引き連絡は電話でいいの?
「いまは話せない…」そんな時でも大丈夫
身内の不幸というのは、心の整理がつかない状態で現実的な対応を迫られるものです。
涙が止まらず頭が真っ白な中、「会社に連絡しなきゃ…」と焦る自分がいても、声すら出せないような時もあるでしょう。
でも大丈夫です。
ほとんどの会社では、忌引きの連絡は電話での報告が一般的とされているものの、あなたの心や状況が最優先です。
無理に冷静を装う必要はありませんし、言葉が詰まっても、うまく話せなくても、事情を理解してくれる人は必ずいます。
特に直属の上司に伝えることが基本とはいえ、どうしても無理な場合は家族や信頼できる同僚に代わってもらっても構いません。
「自分で伝えないと失礼になるんじゃ…」と悩む方も多いのですが、心が追いつかないときには、誰かに頼る勇気も必要な自己防衛なのです。
伝えるべきことは3つだけ、完璧じゃなくていい
連絡のときに伝えるべき内容は、大きく分けて以下の3点です。
- 亡くなった方との関係(例:母親が亡くなりました)
- 通夜や葬儀の日程、場所
- 自分が喪主かどうか
そうやって自分を責めてしまうかもしれませんが、この3点さえ正確に伝われば、最低限の報告としては十分です。
わたし自身、祖父の葬儀で動揺しながら電話をかけたとき、途中で言葉が詰まってしまい、声も震えていました。
でも上司はそれを責めるどころか「無理に話さなくていいよ。気をつけてね」と言ってくれたんです。
その言葉がどれほど救いになったか、今でも忘れられません。
連絡の際には、あらかじめメモを書いておくのもおすすめです。
そして可能であれば、喪主であるかどうかを伝えることで、忌引きの必要日数の目安も伝わりやすくなります。
電話連絡が終わったら、フォローはメールでOK
電話での連絡が一段落したら、できる範囲でメールを送っておくと、職場の人にも安心してもらえます。
内容としては、あらためて忌引きの申請と日程の再確認、仕事の引き継ぎについて簡単にまとめておくとよいでしょう。
たとえば
葬儀の日程は○日、喪主を務める予定です。
急ぎのご連絡は○○にお願いします。
もちろん、悲しみの中でそんな余裕はないという場合もあります。
その場合は、「まず電話だけでもした自分、偉い」と自分をねぎらってあげてください。
必要なことは、無理のないタイミングで、少しずつで大丈夫です。
会社への忌引きを申請するには証明が必要な場合もあるって本当?
「本当に親族が亡くなったのか?」と疑われるのが悲しい
「まさか、亡くなったことを証明しなきゃいけないなんて…」
最初にそう聞いたとき、胸がズキンと痛んだのを今でも覚えています。
ですが、会社によっては「忌引き制度の不正利用を防ぐために証明書の提出を求める」という規定を設けていることがあります。
これは、制度を守る側としてはやむを得ない仕組みでもあり、一部の心ないズル休み対策として導入されているケースが多いのです。
もちろん、ほとんどの社員は正当な理由で忌引きを取得します。
けれど、会社という組織は、すべての人に対して同じルールを適用する必要があるため、一律で「証明書の提出をお願いしています」とされることもあります。
「信用されてない気がする…」と感じてしまうかもしれませんが、個人を疑っているというより、制度としての整合性を保つためという視点で捉えてみてください。
そうすれば、少しだけ気持ちが楽になるかもしれません。
証明に使えるのは?提出を求められやすい書類とは
では、実際に「忌引きの証明」として提出を求められるのは、どんな書類なのでしょうか?
企業によって多少の違いはありますが、比較的よく使われるのが次の3つです。
- 死亡診断書(のコピー)
- 火葬許可証(のコピー)
- 会葬礼状(葬儀の際に渡されるお礼状)
コピーで対応できるかどうか、事前に会社へ確認するのが安心です。
また、火葬許可証も役所で発行される正式な書類で、死亡の事実を証明する文書として十分な効力があります。
提出前には、個人情報(名前・続柄・死因など)が含まれる箇所を黒く塗りつぶす配慮もお忘れなく。
プライバシーは守りながらも、必要な情報だけを提出する形にすることで、双方にとって無理のない対応が可能になります。
会葬礼状については、最近は家族葬や密葬が増えてきたこともあり、そもそも作らない場合も多くなっています。
そのため、可能であれば他の書類での代用を前提に準備しておくと安心です。
証明が面倒なら、有給休暇で対応するという選択肢も
「そんなの出す余裕ない」
「そもそも家族葬だから書類がない」
そんなときは、忌引きではなく有給休暇として申請するという方法もあります。
実際、私の知人も「証明書が必要と知って、悲しみに向き合うより先に手続きに追われてしまった」と言って、有給に切り替えたことがありました。
有給休暇であれば、原則として理由や証明書の提出義務はありません。
もちろん会社のルールに沿った申請は必要ですが、気持ちが落ち着くまでの数日を有給で過ごすというのも立派な選択肢です。
ただし、後から「実は忌引きだった」と分かった場合にトラブルになる可能性もあるため、あらかじめ人事部に確認を取った上で申請方法を選ぶことをおすすめします。
どちらの方法にしても、自分の心を守るための大切な時間です。
大切な人を見送るそのひとときに、余計なストレスを抱えないよう、柔軟に制度を使いこなしていきましょう。
まとめ
忌引き休暇は、ただ会社を休むための制度ではありません。
それは、大切な人との最後の時間を丁寧に過ごすための、心と体を守るための仕組みでもあります。
けれど実際には、土日や定休日の扱い、誰が対象になるのか、日数は何日なのか、証明書の提出が必要かなど、細かい部分で戸惑うことが多いのも事実です。
そして何より、突然の別れに直面した中で、冷静に制度を調べて判断していくというのは、簡単なことではありません。
だからこそ、事前に忌引きの基本を知っておくことが、自分自身を助ける大きな力になります。
会社の規定を確認し、信頼できる人に相談し、必要なときは有給休暇という選択肢も取り入れながら、自分の気持ちや事情に合った形で過ごす時間をつくってください。
忌引きの形に正解はありません。
制度の数字だけにとらわれず、自分が納得できるお別れができるように、心の声に耳を傾けてあげてください。
あなたが少しでも穏やかな気持ちで、大切な人を見送ることができますように。
そして、その後の日常に戻っていくとき、無理せずゆっくりと歩き出せますように。
そんな想いを込めて、この記事を書きました。