
スーパーや直売所で手に入れたたけのこ。
せっかく料理したのに、なんだか口に残るえぐみや苦味があって、「これって食べても大丈夫なの?」と手が止まってしまうこと、ありますよね。
特に小さなお子さんや家族に出すとなると、よけいに気になるもの。
「体に悪いものだったらどうしよう」「下処理を間違えたのかな」と、不安がふくらんでしまうこともあるかと思います。
この記事では、そのえぐみの正体は何なのか、本当に体に害があるのか、そして安心して食べられる状態にするにはどうすればいいのかを、できるだけやさしくお伝えします。
読み終わるころには、モヤモヤがスッと晴れて、旬のたけのこを家族みんなで楽しめるようになっているはずです。
たけのこのえぐみは正しく下処理すれば心配いりません
先に、いちばん気になる答えをお伝えしますね。
たけのこのえぐみの正体は、主に「シュウ酸」と「ホモゲンチジン酸」という成分です。
そして、きちんとあく抜きをしたたけのこなら、家族で食べても問題ないと考えられています。
「なんだか体に悪そう」というあのイガイガした感覚は、たしかに気持ちのいいものではありません。
でも、それイコール「毒」というわけではないんです。
あく抜きという昔ながらの下処理には、ちゃんと理にかなった意味があって、えぐみのもとをしっかり減らしてくれます。
実際、日本では国の機関が、あく抜きしたたけのこを食べて健康を害したという注意喚起を出しているわけではありません。
だから、下処理さえていねいにできていれば、必要以上に怖がらなくて大丈夫。
焦らなくていいんです。
これからその理由を、ひとつずつほどいていきますね。
えぐみの正体と体への影響を知れば不安は小さくなる
「体に悪そう」という不安は、正体がわからないからこそ大きくふくらみます。
逆に言えば、何がえぐみのもとなのかがわかれば、こわさはぐっと小さくなるもの。
ここではえぐみの主な成分と、それが体にどう関わるのかを順番に見ていきましょう。
えぐみのもとは主に2つの成分
たけのこのあのえぐみは、おもに次の2つからきています。
- シュウ酸:ほうれん草にも多く含まれる、植物にはよくあるあくの成分
- ホモゲンチジン酸:たけのこのえぐみの中心とされる成分
たけのこの可食部100gあたりのシュウ酸は654mgほどとされ、これはほうれん草の650mgとほぼ同じくらい。
つまり、ふだん食べているほうれん草と同じくらいの量なんですね。
そう聞くと、ちょっと身近に感じませんか。
もうひとつのホモゲンチジン酸は、たけのこにたっぷり含まれる「チロシン」というアミノ酸が、収穫後に変化してできる成分です。
やっかいなのは、掘ってから時間がたつほど増えていくこと。
一日で倍くらいに増えるとも言われています。
たけのこが「掘ったらすぐ茹でて」と言われるのは、まさにこのためなんです。
えぐみが「害」ではなく「不快感」のレベルである理由
ここがいちばん安心してほしいところ。
ホモゲンチジン酸については、毒性があるという報告は見当たらず、あくまで「えぐみ・不快感のもと」という位置づけが一般的です。
口の中がイガイガするのは、シュウ酸が口の中のカルシウムと結びついて、細かい結晶をつくるから。
不快ではあっても、少し感じたからといってすぐ体に害が出るというものではありません。(あのイガイガ、正体がわかるとちょっと冷静になれますよね)
気にしすぎなくていいけれど知っておきたいこと
とはいえ、まったくのゼロリスクと言い切ってしまうのも誠実ではありません。
知っておくと安心な点を、おだやかにお伝えしておきますね。
シュウ酸と結石の関係
シュウ酸をとりすぎると、尿路結石のリスクと関わるとされています。
ただ、これは「毎日大量に食べ続けたら」という話。
たまに旬のたけのこを楽しむくらいなら、過度に心配する必要はないと考えられています。
気になる方は、シュウ酸がカルシウムと結びつく性質を逆に利用して、わかめやしらすなどカルシウムの多い食材と一緒に食べると安心です。
若竹煮がわかめと合わせるのは、昔の人の知恵だったのかもしれませんね。
体質によっては「仮性アレルゲン」の反応も
たけのこには、ヒスタミンやアセチルコリンという成分も含まれています。
これらは本来のアレルギーとは違うのですが、体質や量によっては、じんましんや口のかゆみといった症状が出ることがあります。
これを「仮性アレルゲン」と呼びます。
食べ過ぎなければ過度に心配いりませんが、お子さんに初めて出すときは少量からにすると安心です。
実はわたしも、初めて直売所で朝掘りのたけのこを買ったとき、ちゃんと茹でたつもりなのに口に残るえぐみが気になって、子どもに出すのをためらった経験があります。
でも正体を知ってからは、「ああ、ほうれん草と同じくらいなんだ」と肩の力が抜けて、今では春の楽しみになりました。
安心して食べるための下処理のコツを具体的に紹介
正体がわかったら、次はいよいよ実践編。
えぐみをしっかり減らすための下処理を、代表的な方法から順にご紹介します。
どれも難しくないので、自分に合いそうなものを選んでみてくださいね。
定番の米ぬかを使ったあく抜き
いちばん間違いがないのが、昔ながらの米ぬかを使う方法です。
たけのこの皮を2〜3枚むいて穂先を斜めに切り落とし、縦に切り込みを入れます。
大きめの鍋にたけのこ、米ぬか1カップ、水2リットル、赤唐辛子1本を入れて火にかけ、沸騰したら落とし蓋をして弱火で40分〜1時間ほどコトコト。
火を止めたら、ここがいちばん大事なポイント。
ゆで汁につけたまま、8時間以上(できれば一晩)かけてゆっくり冷ましてください。
実はこの「冷ます時間」こそが、えぐみ抜きの本番なんです。
冷めていく過程でもあくが抜け続けるので、早く使いたいからと流水で一気に冷やしてしまうと、抜けきらずにえぐみが残ってしまうことも。
せっかちは禁物なんですね(待つのがいちばん難しいんですけど)。
米ぬかが効くのは、ぬかのカルシウムがシュウ酸と結びついて無害な形にしてくれたり、ぬかのデンプンがあくを吸着してたけのこに戻るのを防いでくれたりするから。
おまけにお米の甘みやうまみがうつって、たけのこ自体がおいしくなるという嬉しいおまけつきです。
米ぬかがないときの代わりの方法
「米ぬかなんて家にない」という方も多いですよね。
大丈夫、代わりになるものはちゃんとあります。
米のとぎ汁や生米を使う
いちばん手軽なのが、米のとぎ汁を使う方法。
濃いめのとぎ汁、または生米をひとにぎり入れて茹でれば、米ぬかと似た働きが期待できます。
ぬか特有のにおいが残りにくいのもうれしいところ。
効果は米ぬかよりややおだやかとも言われますが、家庭で食べるぶんには十分です。
重曹を使う
時短したいときは重曹も便利です。
水1リットルに食品用の重曹を小さじ2分の1〜1ほど入れ、皮付きで切り込みを入れたたけのこを20〜30分茹でて、そのまま冷まします。
弱いアルカリ性であくが溶け出しやすく、繊維もやわらかくなるのがメリット。
ただし、ここは注意が必要です。
重曹を入れすぎると、ドロドロになったり、薬っぽい味や苦味が残ったり、茶色く変色したりすることがあります。
「たくさん入れればよく抜けるはず」と思いがちですが、それは逆効果。
分量はきっちり守ってくださいね。
やってしまいがちな失敗とその対処法
下処理で「あれ、失敗かも」となるのは、実はみんなが通る道。
代表的なつまずきと、その立て直し方を知っておけば安心です。
えぐみが残ってしまったとき
茹でたのにえぐみが残っていた、というのはよくあること。
原因の多くは「冷ます時間が足りなかった」か「たけのこ自体が古かった」かのどちらか。
そんなときは、もう一度米ぬかやとぎ汁、重曹のいずれかで10〜60分ほど追加で茹でて、また8時間以上ゆで汁につけてみてください。
ただし、再あく抜きは1回が限度。
2回目になると、えぐみと一緒に香りやうまみまで抜けてしまうので、そこは見極めが大事です。
味付けと組み合わせでカバーする
少しえぐみが残っても、調理のしかたでぐっと食べやすくなります。
濃いめの味付けの煮物やチンジャオロース、カレーやキムチ炒めなど、しっかり味のおかずにすると気になりにくくなります。
油でコーティングする天ぷらやバター炒めも好相性。
濃い味と油の組み合わせが、いちばん食べやすくなるコツです。
白い淡い味付けより、こっくり系のほうがごまかしやすい、というわけですね。
水煮の白い粒は捨てなくて大丈夫
市販の水煮を開けたとき、節のあいだに白い粒がついていて「カビ?」とドキッとした経験はありませんか。
あれの正体は、さきほど出てきた「チロシン」というアミノ酸の結晶です。
食べても問題ない、むしろ栄養成分なので、洗い流さなくても大丈夫。
生協やメーカーの問い合わせ窓口でも、同じように説明されています。
カビとの見分け方は、チロシンはサラサラした白い粒や粉状なのに対し、カビはふわふわ・もこもこしていて、緑や黒など白以外の色が混じります。
見分けがつけば、もう怖くありませんね。
赤ちゃんや小さな子どもに出すときの注意
お子さんにいつから食べさせていいかは、気になるところですよね。
育児の情報をまとめると、たけのこは離乳食の完了期、だいたい1歳〜1歳6か月ごろから、穂先のやわらかい部分を薄く細かく刻んで少量ずつ、というのが主流の考え方です。
たけのこは食物繊維が多くて噛みにくいので、無理にあげる必要はありません。
初めて与えるときは小さじ1程度から、平日の午前中など、もしものときにすぐ病院にかかれる時間帯に試すと安心です。
我が家では、最初は時短になると聞いて重曹を試したんですが、つい多めに入れてしまって、たけのこご飯がほんのり苦くなった失敗があります。
それ以来、面倒でも米ぬかでじっくり派に。
一晩待つあいだは「早く食べたい」ともどかしいけれど、翌朝のえぐみのなさは別物でした。
子どもたちも「これおいしい」とおかわりしてくれて、待った甲斐があったなと。
たけのこのえぐみは正体を知れば怖くない
最後に、ここまでの内容をぎゅっとまとめておきますね。
- えぐみの正体は主にシュウ酸とホモゲンチジン酸で、シュウ酸の量はほうれん草とほぼ同じくらい
- えぐみそのものは「不快感」のもとで、毒性があるという報告は見当たらない
- きちんとあく抜きをしたたけのこなら、家族で食べても問題ないと考えられている
- 米ぬか・とぎ汁・重曹で茹で、ゆで汁につけて8時間以上ゆっくり冷ますのが大事
- えぐみが残っても、再あく抜き(1回まで)や濃い味・油の調理でカバーできる
- 水煮の白い粒はチロシンで無害、子どもには完了期から穂先を少量ずつ
下処理にちょっと手間と時間をかけてあげるだけで、たけのこはぐっとおいしく、安心して食卓に出せるものになります。
旬のものを家族で囲める季節は、一年のうちでも限られています。
せっかくの春の味覚、「ちゃんと処理できたから大丈夫」という小さな自信を持って、ことしはゆっくり楽しめたらいいですよね。
あなたとご家族の食卓に、おいしいたけのこが並びますように。